変な旅?10

変な日記集

変な旅 変な旅2 変な旅3 変な旅4 変な旅5 変な旅6 変な旅7 変な旅8 変な旅9 変な旅10

変な日記集2


部屋が荒れている・・・



僕は内藤君、ユカリさんを探した



見渡しても花瓶や何かの書類、木片などが散らばっているだけだ・・・



「内藤君! ユカリさん!」


と、呼ぶ声に反応したかのように部屋がざわめき始めた


書類や木片がカサカサと地面を移動し
その下から黒いもやもやとしたモノが部屋の奥のソファに集まり始める


きしり・・・きしきしきしきし・・・


黒い革張りのソファに黒いもやが軋り音を立てながら座った


『ようこそ・・・まさかこちら側の者が来るとは思わなかったよ・・・』


黒いもやは不安定に揺らめいていた


「主犯はあんたか?」
やや怒気のある僕の声にソレは愉快そうに答えた


『いや、手助けしたまでだよ・・・ククク』



「・・・残念ながらもうあんたの手助けは必要ないよ」


勝ち誇った顔をして僕は言った


「もう、DJさんは破滅を望んではいないよ・・・それに黒いそのもやもやしたモノも消えた」


『ほぉ・・・消えたのか・・・では・・・』


きしりきしり・・・と耳障りな軋り音をだし大きくヤツが揺らめいた


『・・・ほら・・・増やしてみたよ・・・クク』

いやらしい声を出し、周りに黒い見覚えのあるもやをいくつも出した



僕の表情はどんなだったか分からないが
その表情を見たヤツはとても愉快そうに笑った


『いってらっしゃ〜い・・・』

そう言うとそのもやは床に沈んでいった



僕は言葉を失っていた・・・



『そうだ・・・まだ放送中だったなぁ・・・』

ヤツが楽しそうにそう言うと、部屋のスピーカーから放送中のDJさんの声が聞こえてきた

が、徐々にノイズが入り、キシキシと笑うような軋り音が聞こえてきた


『おっと・・・ゲストも呼ばなくては・・・』


再び大きく揺らめくと

ヤツの体内から内藤君とユカリさんの頭だけがゆっくりにじみ出てきた


僕は絶句している・・・

生きているのか・・・?


『良いねぇ・・・その顔・・・ククク』


「内藤君! ユカリさん!」

僕は懇願するように叫んだ




返事が無い・・・


数秒しか経っていなかったかもしれないが
その沈黙は僕にとってはとても永く、悲痛な静寂だった・・・



キシキシと嬉しそうにヤツが揺らめいている




「いよう・・・相棒・・・」


内藤君が苦笑いを浮かべ反応してくれた


「だ・・・大丈夫?」

なんだかとてもトンチンカンな事を聞いてしまっている



「ああ・・・居心地は酷く悪いが・・・隣にユカリさんがいるだけで救われてるよ」


『ハッハッハッハ、面白いカラスだな・・・コメディアン番組を任せてやろうか?』


「上がアンタじゃ売れるモンも売れないぜ・・・それより、相棒・・・さっさと終わらせて

  ・・・・・・合コン行こうぜ」


内藤君はそれを言うとニヤリと笑って見せた



「・・・私も・・・参加させて・・・もらいますよ・・・」


ユカリさんが力なく答えた


「うん・・・終わったら合コンだ・・・楽しみだね・・・僕、初心者だからお手柔らかに」


僕が答えると二人は少し笑ってくれた


そして、目を閉じた



『いやはや、私も合コンにまぜてくれないか?』



「アンタは遠慮してもらうよ」


『冷たいねぇ、同じムジナじゃないか』


「アンタなんかと仲間になった覚えはないよ」



『・・・ん? 分かってないのか?』

相手が何を言っているか良く分からない・・・



『ふん・・・まぁいい・・・一緒に聞こうじゃないか・・・破滅の宣告を』


奴がスピーカーを指差した


ノイズはもう聞こえない


代わりにキシキシとあの音がスピーカーからもれている



従エ・・・



かすかに耳障りな声が聞こえる


従エ従エ・・・



その声はどんどんと数を増してゆく


従エ従エ従エ従エ従エ従エ従エ従エ従エ従エ従エ従エ従エ従エ・・・・


耳障りな声の中、DJさんの声が聞こえてきた



「みなさんに・・・・最後の言葉を伝えます・・・・」



従エ従エ従エ従エ従エ従エ従エ従エ従エ従エ従エ従エ従エ従エ・・・・



「この言葉がみなさんに届きますように・・・」



従エ従エ従エ従エ従エ従エ従エ従エ従エ従エ従エ従エ従エ従エ・・・・



「いま、まさに塞がれたこの村に外への道が通ろうとしています」



従エ従エ従エ従エ従エ従エ従エ従エ従エ従エ従エ従エ従エ従エ・・・・



「僕の言葉を・・・外へ繋がる道を通った後にも・・・みなさんの心に留めて置いて
 そして・・・忘れないで下さい」



従エ従エ従エ従エ従エ従エ従エ従エ従エ従エ従エ従エ従エ従エ・・・・



『同士諸君! いまから言う言葉を真摯に受け止め、実行して欲しい!』

目の前の奴の声がスピーカーから町に響いた

『ククク・・・さぁ、最後の仕上げは人間自らするのだ・・・私は手を貸すだけ・・・』

奴はゆらゆらと愉快そうに揺らぎ笑っていた




ミシ・・・



奴の顔が歪む


そして勢い良くソファと共にひっくり返った




イラついた


自分では殴ろうとは思わなかったが体が動いてしまった



これがぶち切れと言うやつか・・・



しかし、良く吹っ飛んだものだ・・・案外アイツは弱いのかもしれない


このままボコっちゃえば、もしかしたら解決出来るかもしれない・・・


DJさんが言葉を言う前に・・・





「あ・・・」


僕は奴にとらわれている内藤君、ユカリさんの事を忘れていた・・・

恐る恐る、床に伏せているヤツを見た


・・・居ない・・・

というか、見えない・・・


何処に?
またアイツの中に?


僕は倒れている黒い影に目を凝らした



・・・



中に入っちゃったぽい・・・ぞ


やばい・・・やばい・・・うわ、どうしよう・・・・


僕はちょっと泣きそうになっていた


必死になって倒れているヤツの周辺を見渡した






よかった・・・

運良く二人はひっくり返ったソファの背もたれ部分に倒れていた



再びヤツに視線を移したが気絶でもしているのか動かない・・・
ただゆらゆらと黒い影が床に張り付いている




しばらく様子をうかがっていたが、ソファに倒れている二人が心配だ




任務完了・・・


僕は心の中で呟いた


後はDJさんの所に行ってあの黒い奴を何とかして、んで二人を病院に・・・



ソファに転がっているユカリさんを背負い


内藤君をその部屋にあった布袋に入れ、口にくわえた



今、ヤツに襲われたら・・・



そう考えるととても怖かったのでちらちらと何度も、動いてないのを確認しながら部屋を出た




階段を下りる

放送が終わったのか・・・?
建物全体がやけに静かになっている・・・


階段を下りる僕の足音しか聞こえない


しかもその足音は人を背負ってるような重いものではなかった


妙にユカリさんが軽いのだ



女性の体の重さなど良く分からないので


さすが、天使・・・


と言うことで納得した



階下、DJさんのいる階につき、走って放送室に向かう


その時、スピーカーからノイズが漏れた

スピーカーから聞こえてくるのはノイズ混じりのDJさんの声だ

疲弊したような声

ざらついたノイズと共に『従エ』の声

最後の言葉・・・

言わせちゃいけない・・・

破滅の言葉は言わせちゃいけない



僕は二人を廊下に置き走った

ダメだ・・・走っても間に合わない
僕がどんなに早く走っても話すスピードには敵うはずがない


僕は大きく息を吸い込み、「だめだ!」と言おうとしたが


「だ」の部分で目の前が真っ白になった




すべてを射抜くような光が僕を床に張りつけた




「では、最後の言葉を言います・・・」


DJさんの声が聞こえる

だめだ・・・言っちゃだめだ・・・


間に合わなかった・・・


例の黒いもやがDJさんの周りでキシキシと笑っているのが目に浮かんだ


光はジリジリと突き刺し焦がすような強さになり僕の目の前も思考も真っ白にさせた



「従わないで下さい・・・誰にも・・・僕の言葉にも・・・
 あなたはあなたです。 決めるのはあなたです。 今まで僕が言ってきた言葉は
 決して正解ではありません。 どうか、自分で決めてください。 自分で考えてください。
 幸せも不幸も自分の中にあるのです・・・みなさん何も犠牲にせず・・・幸せでいてください」


DJさんの声が優しく響く・・・よかった・・・


ユカリさん、内藤君・・・終わったよ・・・



「さぁ、外に出ましょう」




意識が焼き切れた









『マロ的にはこの悪魔君も―』

「いえ、この人は―」

『え〜、でも、マロとしては―』




声が聞こえる・・・




「あ、目が覚めましたか?」


・・・ユカリさんが覗き込む

「・・・あれ・・・? ・・・あっ!大丈夫ですかユカリさん!」

僕は起き上がってユカリさんを見た


「おいおい、立場が逆だろう・・・」
内藤君が笑う


「あ、内藤君も平気なの?」

僕は内藤君を見た



周りを見渡すと、そこは真っ白な病室だった


・・・わけがわからないこの状況をユカリさんが丁寧に教えてくれた



と言っても、ユカリさんも内藤君も気を失っていたので
そこで何が起きたのかはよくわからないが

神様が来て、僕らを介抱し、事件は収まり、僕はなにやら「何か」らしい
口を滑らしてしまったらしく何かを言いかけたが途中で口をつぐんでしまい
「何か」が何なのか僕にはわからないでいる・・・


「ええと・・・結局は・・・?」


「万事OKと言うことさ」
内藤君が布団の上に乗る


「おつかれさん、相棒」

「おつかれさまでした」


何か、きちんと説明してもらいたいところが色々あるが、二人の笑顔を見たらどうでもよくなった



あ、DJさんは?


内藤君がベッドサイドに置いてある本をくちばしで指した


「・・・・・・詩集?」
僕は本を手にとりパラパラめくった


「ええ、DJさんの本です」
ユカリさんがニコニコしている


「へぇ・・・そんな本が発行されてるんだ・・・」


「いや、されたんだよ」


・・・


疑問が一つ浮かんだ・・・



「えっと・・・今日・・・いや、あの日からどれくらい経ったの?」



僕は恐る恐る聞いてみた




「5ヶ月です・・・よく寝てましたね」
「寝すぎだよ」


僕は絶句した・・・







1ヶ月後、、僕は運動不足のリハビリを終え、詩集「従うな」を土産に病院を出た・・・

僕は山に来た



切り株に腰掛けているじいさんに会う為だ



さて・・・何を話せば良いのかなぁ・・・


と、考えながら山道を歩く




枯葉を踏むとカサカサと音が鳴るのが楽しくて
枯葉の積もった部分を見つけては飛び乗ったり蹴飛ばしたりしながら
ガサガサと歩き続けた


確か・・・この辺だったような・・・


切り株のじいさんが見当たらないので周りを見回していると

びゅぅ

風が吹き枯葉が舞い上がった


赤や黄や茶が目の前に広がり


おおぉ・・・


思わず唸ってしまう光景だった




「どうじゃった? 山の向こうは」


切り株に腰をかけたじいさんが肩に乗った枯葉を払いながら聞いてきた



いつの間に・・・


「ええと・・・何から話そうかなぁ・・・」

僕はあの町で起きたことを思い返していた



「なぁに・・・時間は十分にあるわぃ、最初から話してくれ」

じいさんはにこやかに言った



「では・・・・ええと・・・・」




僕は崖から落ちたことから話し始めた


話の途中に「ええと・・・」と何回詰まった分からないが


それでも終始笑顔でじいさんは僕の話を聞いてくれた



それがなんかうれしかった




変な日記集

変な旅 変な旅2 変な旅3 変な旅4 変な旅5 変な旅6 変な旅7 変な旅8 変な旅9 変な旅10

変な日記集2



 説明


SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送