変な旅?8

変な日記集

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変な日記集2




6階は放送室が集まった階のようだ

廊下を歩き回ってる

気配がある部屋を探しているわけだが・・・


鼓動がうるさい・・・


DJ・・・つまり、悪魔の手先・・・
実行犯・・・


大役を任された・・・

緊張しないわけが無い
ドキドキドキドキしっぱなしだ・・・

6階の廊下を歩く


僕だけの足音しかしない


人がいるのか?



部屋をしらみつぶしで探すしかないようだ・・・

気配が無いのだから・・・



6階を一周して元の位置に戻った



さて、どこから探そうか・・・



ドキドキドキ



大切なものは、重要な拠点は・・・



奥だろ



階段から一番離れた放送室に向かった


内藤君は平気だろうか・・・

一番奥の部屋


ドアの前で気合を入れなおし

軽くその場でピョンピョンと跳び身体をほぐし


また気合を入れなおす



くそう・・・こえーよ・・・


ガチャリとドアノブを回す


キィッ

っと音を立て、扉が開いた・・・



逃げる準備と戦う準備を同時にして慎重に素早く部屋の中を確認した


・・・




誰も居ない・・・



一気に安堵の塊が口から漏れる



はぁぁ〜


やけに狭いその放送室を見回す


マイクの置かれた机に紙コップが置かれていた


・・・


いきなりビンゴか?


確かにここには誰かが居た・・・


・・・今はどこに?



トイレ?
他の放送室?
最上階?


ここでじっくり待つか?



いや、内藤君が心配だ・・・

全部の部屋を見るか・・・


でも、廊下でばったり出会ったら・・・


・・・


また、自分が臆病な事を感じた


会わなければ良いなと思ってしまった・・・



ああ・・・自分が嫌だ・・・


自己嫌悪しながら部屋を出た・・・

奥から順々にドアを開けてゆく


時折カギが閉まっているドアもありドキッとする


今、中に誰か居るのか・・・


一気に脈が早くなる・・・


しかし、中から人が出てくる気配が無く

次の部屋に移動する


そんな事を繰り返し


全ての部屋を調べてしまった



この階には誰も居なかった・・・


と、思った瞬間



ジャー・・・・・・・・




水が流れる音が聞えた



あ、トイレ・・・


この階に人が居た



でもどうする・・・?

どうする・・・?

どうやって・・・?

頭の中が混乱してゆく



待ち伏せだ・・・

その言葉が頭に浮かんだ瞬間
僕は最初に調べた奥の部屋に急いで駆け込んだ

コツコツコツ


足音が響いてくる


足音と僕の鼓動しか耳に入る音は無い


コツコツコツコツコツコツ


どんどんと近付いてくる


じんわりと手に汗が染み出す


鼓動が外まで聞えてしまうのではないか心配になるほど鼓動がうるさい

ああ、身体に悪い環境だなぁ・・・と思った


コツ・・・


足音が止まった


気付かれた?


僕は全身から血の気が下がるのを感じた



チャリチャリ・・・カチ・・・


音が聞える


ガチャ・・・バタン・・・



足音が聞えなくなった・・・








・・・あれ??

・・・


この部屋じゃなかったのか・・・


笑みがこぼれた

ホッとしたのもあるが、それ以上にダメな自分を笑ったものだ


何やってんだろうな・・・




コントかよ・・・




僕は部屋を出て奴が入ったであろう隣の部屋の前に立った


もう緊張に慣れたのか、鼓動も落ち着き頭も良く回るようになった


良く回る頭で考えた結果
非力な僕でも出来そうな兵法を思いついた




戦わず、口説き落とす・・・





我ながら名案だと思った

ドアの前に立ち


ノックをする



コンコン



ガタッと中から音が聞えた


とたん、ちょっと怖い想像をしてしまった



ドアをぶち抜き、太い腕が僕を殴り飛ばす


うわ・・・こえぇ・・・やべぇ・・・

ドアから少し離れようとすると


中から声が聞えた



「どなたですか?」


ラジオで聞いた、あの声だ




優しいあの声だ



「あの・・・突然ですが取引しませんか?」
と僕は言った

この声から感じる雰囲気は悪い人じゃない
話せばなんとかなるかもしれない
喧嘩にも・・・もしかしたら勝てるかもしれない・・・と思った
そう思うと、少し勇気が湧いてきた


「・・・君は誰だい?」







「僕は・・・








・・・大魔王です」

「大・・・魔王?」

部屋の中のDJはいかにも怪訝そうな声をかえした


「はい、僕は大魔王なんです・・・だ!」

「・・・」
DJは何も喋らない

僕は続けた
「取引しませんか?」


「・・・取引といいますと?」
DJの声は少し弱々しい印象を覚える


「この町の人たちを開放してくれませんか?」


「・・・」


「開放してくれるなら、あなたの望む物全てを与えます」


「・・・全て?」


「ええ、全てです」




「・・・僕が望む物は・・・」



「望む物はなんですか?」



「人類の終わりです」

僕は何も言えなくなった


何故?

何故この人はそんな事を望んでいるんだろう


何があったのだろう


と疑問が渦巻いた


「何故・・・滅亡を望むのですか?」


少し間を置いてDJは話しだした

「大魔王さんから見て、人類はどうですか?
僕にはとても邪悪で我儘で弱く・・・いない方が良いと思える存在に見えます」

「・・・そうですね」
僕は自分が言われているような気がした

「他の生物を見てください・・・人があまりにも愚かな事がわかります」

「・・・ええ・・・自分もそう思いますよ」
今までのTVのニュース場面が頭を過ぎる

それは愚かな行動を行った結果の場面


「時折、賢く、それこそ『善』といった人もいますが・・・人類一般はやはり『悪』です」

DJの声は諦めの声に聞えた

「・・・そうですね」


僕にはこの人を説得する事が出来るだろうか

DJの諦めの声に僕は弱気になってしまった


諦めた人に何を言えば良いのだろう

僕に頭には何も言葉が浮かばなかった

沈黙が訪れている


僕は何も言えないでいる


DJの次の言葉を待っている

そして、恐れている



僕は何が言えるだろうか・・・







DJは押し黙っている




この沈黙はとても重い


僕は何を言えばいいんだろう・・・



DJはこの沈黙に何を考えているのだろう・・・














そうか・・・






たぶんそうだ



この人は・・・僕の言葉を待っている・・・



なんとなくそう思った


この人は誰かに止めてもらいたいんじゃないのか?


だから、滅亡を望む発言とは裏腹のこんなにも力無い言葉が出てくるのでは・・・?




そう思った





「人類は・・・確かに『悪』かもしれませんね」

僕はドアに向かって喋り始めた


「自然を破壊し、命を奪い・・・他の生物だけでなく自分の首をも絞める愚かな生物です」


DJは黙っている


「ところで、質問なんですが・・・いいですか?」


「はい・・・」
DJが静かに答える



「『悪』ってなんですか?」



「他の者に迷惑をかけることです・・・僕はそう思います」



「では、あなたの意見で善悪を決めるとするなら
 人が木を切り家を建てるのは『悪』・・・自然破壊ですか?」



「そう思います」



「では、ビーバーが木を切り家を作るのは自然破壊ですか?」




DJは少し黙り

「それは習性だから・・・仕方が無いと思います」

と答えた

いい訳じみた感じが自分でも分かっている様な声だ




「そうですか・・・では、人が人を殺すのは『悪』・・・・ですよね?」


「・・・はい・・・罪も無い人を殺すのは『悪』です」


「知ってますか?猿の共食いや子殺しを?」



「・・・それは・・・

 でも、人は何の罪も無い生物を目的も無く殺します!」

DJは少し声を荒げた




「ええ、生物を楽しみだけで殺すのは・・・確かに人間だけかもしれませんね」



「ええ・・・そうです」



「なら、目的がある殺しは悪くない・・・ということですか?」



「・・・」


DJはまた黙った・・・



「あなたが行おうとしてる事・・・それは・・・・・・聞くまでもなく『悪』ですよね?」



「それは、この世界を守るため・・・」



「誰かが守ってくれって貴方に言ったのですか?
 誰が人類を全て殺して、僕たちを守ってと言ったのですか?
 誰ですか?誰がそんな事を頼みました?」




うるさい!

DJは子供のように声を荒げた





「僕に任せてもらえませんか?」



「僕が何とかしますから・・・あなたが苦しむ事じゃない・・・」


DJは何も答えない


「あなたは気付いてるはずだ、他のやり方があることを」




ドアの向こう側に沈黙が訪れた





とたん、ゾクリと寒気がした

足が微かに震え始めた



すごく嫌な感じがする


と、何故か僕は一気に後ろに跳んだ



とたん


いきなりドアから黒い手が飛び出してきた


いや、手と言うにはあまりに不安定な形だが・・・

ソレはドアをすり抜けさっき僕が立っていたところでゆらゆらとしている



危なかった・・・
まさに間一髪だった・・・

本能と言えばいいのか、少しでも自分の行動に疑問を抱いていたら
そこにある何かやばいモノに掴まれるところだった・・・


僕は壁を背にくっつけソレを見た

足の震えが止まらない・・・そしてソレはとても気分が悪くなる何かを出していた



「・・・悪意」


僕は呟いた

妙な軋り音を出しながらそれはゆらゆらとそこにいた



『アンマリ コイツヲ イジメルナヨ』


それは僕にそう言ってニヤリを笑ったように見えた・・・



「お前、一体何な――」



上の階から大きな衝突音、そして金属や陶器やらが床に落ちる音に僕の言葉は遮られた


僕は上を見上げた


・・・


内藤君!?


内藤君の身に何か起きた・・・そう直感した



最悪の結末が頭をよぎる



とたん恐怖が身体の隅々まで行き渡った



腕が、腰が、足が、重い・・・


助けて・・・



ユカリさん・・・助けて・・・


誰か・・・



早く・・・






絶望的な状況の中・・・僕は神に祈ることしか出来なかった



軋り音が笑い声に聞えた・・・


視線を戻すといつ間にかそれは消えていた



絶望で足が身体が震えてる・・・



上に行かなくちゃ・・・


その思いとは裏腹に身体はそこから動こうとしない



「動け・・・動けよ・・・」


泣き声にも似た言葉では身体も言う事を聞いてはくれない



また、情けない自分が出てきた・・・



なんなんだよ・・・ちくしょう・・・

ちくしょう・・・




ちくしょう・・・・・・





僕は上の階へ行こうと動かない足を引きずった



ちくしょう・・・




ちくしょう・・・・・・



早く行かなくちゃ・・・





動けよ・・・何なんだよ・・・ちくしょう・・・


上手く動いてくれない足を叩く



しかし、痛みさえ感じれない・・・




体に気が入らない




行かなくちゃ・・・助けに行かなくちゃ・・・



階段までの廊下がとても長く感じられる



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