変な旅?

変な日記集

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変な日記集2





旅に出た。

目的の無い旅だ。

家の留守は大神君や鮫島君に任せて

・・・

少し不安だ。

まぁ、もう家を出てしまったし、心配しても仕方が無い。




今、戻れば間に合うかも・・・

・・・。


引き返そうとしたが

奴らを信じてそのまま旅に出ることにした。

決して諦めた訳では無い。


とりあえず

あの山を越えようか。

ポケットのガムを取り出し

スッと振り返った。



さて、行くか。

心の中で小さく呟きガムを口に放り込む


もぐもぐ

ビーフジャーキー味のガムはうまい。


山がある。

山が僕の目の前に座っている。

山からの風は大きな溜息に思えた。



山の入り口には鳥居が建っている。

この鳥居をくぐると何処か別の世界に繋がっているように思えた。

もう、二度とこの世界に戻れないような・・・


鳥居の横を通り、山に入っていった。

妖怪関係の人が出てきそうな感じだ。

・・・

誰かに見られているような・・・

そんな気配がする。

帰ろうかな・・・。


「おい」

何者かに呼ばれた。

振り向くが姿が見えない。

「おい、こっちだ」

視線を下の方にずらすとモグラが顔を出していた。




なんすか?

モグラに聞いてみる。

「見下してんじゃねぇよ!!」

怒られた。


モグラは怒り続けている。


バサッ

上の方から音がした。


バサッ

黒い影が目の前

というか、足元を撫でた。


バサッ、バサッ


・・・影が通り過ぎるとともにモグラが消えていた


『こんな所で何してんよ?』

・・・聞きなれた声が頭の上から聞こえてくる。

上を見上げると

黒い影がすぐ目の前に降りて来ていた。

「うわ!」

バサッと頭の上に乗っかった。

『散歩か?』

「・・・内藤君、頭の上で食事しないでよ?」

『ああ、今降りるよ・・・食うか?』

そう言って口にくわえたモグラを差し出す。

「・・・いらないっす」


内藤君が地面に降りると、辺りに笑い声が響いた


 『は〜っはっはっは!』

 お前が口にくわえているものは、俺ではない!

 俺の変わり身の術にまんまと引っ掛かったな、馬鹿カラス!』

「・・・?」

内藤君の口元を見る・・・







 『お前がくわえているものは、俺の弟だ!』





・・・。


内藤君にくわえられているモグラの弟はじたばたしている。
























残念な兄を持ったな。


内藤君はくわえていたモグラの弟を地面に置き

「苦労してるな」
と、憐れんだ表情でモグラの弟を見つめた。

生命の危機を脱したモグラの弟は一目散に逃げて行った。

そして巣穴に潜った後、こちらを振り向いて一礼し消えた。

 『おい、あほカラス!今回は俺の勝ちだな!ははははは・・・』
モグラの声が消えた。

「自分に兄弟がいなくて良かったよ、・・・またな」
バサッと宙を舞い内藤君は空に消えた。


早いとこ、山を抜けようと思った。


山を登って行くと、大きな切り株に腰をかけているじいさんと目が合った。


『おう、若いの・・・なぜ、山を登る?』

僕は歩きながら答える。

・・・山の向こうに行きたいから・・・


『なぜ、山の向こうに行きたい?』


僕は歩きながら答える。

・・・好奇心とか・・・


『何か得るものがあるのか?』


僕は老人の前を横切り答える。

・・・さぁ?・・・


『では、なぜ?』


僕は振り向いて答える。

・・・まだ、向こうに行ってないんだから何を得るかとかわからんでしょ?


『・・・ふむ・・・それもそうじゃな』


じいさんは白く長いヒゲを指ですいた。


『戻ってくる時、教えてくれんか? 向こうに何があったのかを・・・』


じいさんはヒゲをグシャグシャと触りながらチラリとこちらの胸の向こう側をみた。




・・・教えますよ。


僕は山を登りながら答えた。

ふぅ〜


山の頂上に着いた。

山から見た周りの景色は・・・




曇っていてよく分からない。


まぁ、そういう時もあるさ。


さて、後は山を降りるだけだ。
新しい世界が待っている。

誰も僕を知らない町


今、僕は胸を躍らせている。

流れるように山を降りて行く。

足がとても軽い!

・・・・・




軽いはずだ・・・・・・僕は足を踏み外し崖から落ちている最中だ。


どうりで、下からの風が強いと思ったわけだ。

高いところから落ちると


結構・・・


予想ではすごく静かに感じるのかな、と思っていたんだけど


結構・・・


バタバタと服が暴れて

ゴウゴウと風が聞こえて


すごく五月蝿い


そしてバサバサと音がする

『知ってるか? 人間て自力じゃ飛べないんよ?』

・・・

あ、内藤君・・・


バサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサ


が、たくさんいる・・・

・・・いや、内藤君のお友達か・・・


『みんなぁ!ちょっくら手伝ってくれ!!』

と、内藤君達は僕の服を掴みバサバサと落下速度を下げていった。

バサバサバサ

鬼太郎みたいだなぁ・・・

スト。

地面に足が着いた。

と、とたんに腰が地面に落ちた。

足が震えている。

無事だと安心した瞬間、恐怖が弾けたみたいだ。

うまく呼吸も出来ないでいた。

トン、と頭の上に内藤君が飛び乗った。

『生きてるか?』

ありがとう、内藤君、と皆さん。何とか無事に・・・


 服が穴だらけで伸びきっていた・・・


無事に地面を踏みしめることが出来ました。本当にありがとうございました。


『何々、助け合いの精神がなければ、自分の身も危ないからな』

内藤君はすこし息を切らせて笑った。

内藤君が掴んでいた首の後ろ部分が一番伸びていた。


ありがとう。


心からの声だ。

ところで、何処かに旅行でも行くの? こんなに大人数で・・・






『・・・知りたいか?』
内藤君はにやりと笑った。



・・・合コン?




『・・・・・・・・なんで分かった!?』





はぁ・・・




『行くか?』




いや、NOです。

内藤君たちと別れ、とぼとぼと見知らぬ町を歩く。


ここの人たちは、誰も僕を知らないんだ・・・・


そう思うと、少しさびしくなったりもする。


犯罪を犯してしても、あんまりバレないのではないか?・・・とも少し思ったりもする。


少しだけ・・・。

『此処にはさ・・・』


猫が自転車に話しをしている。


『春になるとな、すっげぇ綺麗な桜の花が咲くんだよ、・・・ほんと綺麗なんだ』


『ピンク色の欠片がちらちらと風に舞ったり、花弁の絨毯が出来たりするんだ』


猫の目が細くなる。


『此処は俺の土地でもないからさ、文句も言えないけどさ・・・』





猫の見つめる先には真新しい小さな駐車場が出来ていた。






『たった四本の桜の木だったけどさ・・・』


『・・・う・・・うえ〜ん・・・・・うえ〜〜ん・・・・』

猫の

くしゃ、となった顔を見て

大粒の涙を見て





それでも


僕は何も出来ない。


ただ

同じように、胸を苦しくするだけだった。


僕は、何か出来るはずなんだけど・・・


何も出来なかった。

この町の宿を探した・・・


とぼとぼと、町を歩き回る・・・




迷子。




と、言うのかな?




どこに何があるのかサッパリ分からなく


少し途方に暮れていた。


初めての土地の初めての夕暮れ


たまにはこんな時があってもいいかもしれない


と、思った。

「ハイ! 少年! そんなとこで! 何してるの!」


変な喋り方のバッタが近づいてきた。


宿を探してるのです。


「ワオ! それは! 簡単に! 解決! できるさ!」


どこかいいところ知ってますか?


「イエス! 知ってるよ!」


どこがいいですか?


「金毘羅! 金毘羅! そこが! いい感じ!」


ありがとうございます。今から探しに行って来ます。


「ここを! 真っ直ぐ! 10キロ!」







・・・え?10キロ?


「走れ! 跳べ! 頑張れ!」


遠慮します。

近場の宿屋を探した。




漫画喫茶で・・・・




どうやら・・・・











今夜はここで一晩明かしそうだ・・・・。

風邪引いた・・・



声がいつもより低くなってしまった。



げほげほ



実は声変わりか?



今日こそ宿をちゃんと見つけよう・・・

町をぶらぶらしているとあることに気付く・・・


この町のいたるところに、いい言葉的な紙っ切れが貼ってある。


なにやらラジオの番組で素敵な言葉を言ってくれるのがあるらしい。


そんなことより宿探し・・・



げばらっ!げほっげほっ!!


うう・・・何やら風邪が悪化しているらしい・・・



僕は咳き込みながら地面にヒザをついた



やばいな・・・宿よりも病院か?



と、そこに・・・

「大丈夫ですか?」


女の人が僕の目の前に立って、心配そうにこちらをうかがっている。


 多分・・・大丈夫です。


「私の家近所なんで、少し休んではいかがですか?」


いや・・・女の人の家に行くのは少し気が引けます。


「あ、うち病院なんですよ」


 なるほど・・・

では、お言葉に甘えて・・・


結局入院することになった。

真っ白の空間・・・



ラジオから言葉が流れる。



『生きていれば、涙は出るもの。生きているなら、涙を拭いなさい』



・・・ローカルの番組かな?



『続きまして、恋が出来ないという男の子に送る僕からのメッセージ』



・・・



『言い訳はいいから、伝えてみれば? どんな結果でもきっとそれは前進だよ?』



・・・病院内が静かだ・・・皆、聞いているのかな?



ああ、これか。

町にいっぱい張ってあった紙切れの正体は・・・


この町の人はこの番組にゾッコンらしい。




今度、葉書送ってみようかな・・・

ふらふらと病院内を歩いてみる。


不思議に思う。


この中には・・・健康な人がいないのだ。


みんなどこか悪いのだ。




なんとなく、不思議に思う。




こういう環境に慣れてないからな。




白い小象が言う。


「外の世界もあまり変わらないさ、ただ入院しないだけで皆どこかが悪いのだよ」


心が読めるのか?


「いや・・・ただの独り言だ」



小象はのそのそと病室に帰っていった。



僕も戻るとするか・・・

看護士さんが言う。

「保険証ありますか?」



しっかり者の僕はちゃんと持って来ました。



「はい。ここにあります」



渡すと看護士さんは大きな声を上げた。


「隣の町から来たんですか!?」




何をそんなに驚いているんだろう?




「うわ〜、変わらないんだぁ」

看護士さんはじろじろと僕を見る。

この人は何を言ってるんだろう?

「あの?」
僕は看護士さんの視線に耐え切れなかった。
と言うか、わけがわからなかった。


「ああ、すいません。この町の人以外見たこと無かったんで・・・」


「へ?」
・・・?
新米かなこの人・・・?


「どうやって来たのですか? ヘリコプター?」

・・・どうやら、この町は過疎が進んでいるらしい。


「いえ・・・山から・・・」


「山から!? 通さずの崖はどうやって降りたんですか?」



「・・・カラス・・・で」

通さずって事は・・・人を遮断するって事だよなぁ・・・


「カラス!?」



つまり・・・



過疎ではなく・・・シェルターに近いみたい




「カラス使いなのですか?」



「いえ、たまたま友達がカラスだったのと・・・運が良かったのです」



「・・・この町からどうやって出るつもりですか?」


僕、どうやって出るんだろう?

この町は周りを見事に山というか崖に囲まれていて人の侵入を許さない。


昔、難攻不落の要塞、隠れ里としてあったと言われてもうなずける。


外へと通じるトンネルがあったらしいのだが土砂崩れで塞がってしまったらしい。


そのため、山を飛び越える手段のない人々は何年もこの町から出れないでいるみたいだ。


看護士さんが言うには、ヘリコプターでもこの町に来るのは困難らしい。


この独特な地形の為、上空の風は荒れているらしく多くの人は
途中で諦めるか墜落してしまうとのことだ。

運良くこの町に降り立つことが出来ても再び外に行くことは不可能とはっきり言った。



今、トンネルの開通に内側からも外側からも尽力を注いでいるみたいだが

結構大きな町は畑も農場も色々あり自給自足が出来ているので
この町の人はあまり不便には思っていないらしい。


むしろ、外側の人間が困っているのだとか。


ここの名産品「隠れ茸」は世界が絶賛する美味しさで、先日僕も食事の時間に食べた。



涙の出る美味しさなんて食べたことなかった。



そんなキノコの供給がストップしたため、外側では大きな被害を被っているらしい。


僕は全く知らなかったが・・・



こりゃ、この町からすぐには出れなそうだな・・・

ラジオから声が聞える・・・
















「何度も言うようだけど、僕は言葉を流しているだけ、それを強さに変えたのは君の強さだよ」
















この町の事情を知ったので、このラジオの人気の秘密が分かった気がした。

みんな、苦しいんだよなぁ・・・やっぱり。

もしも






もしも、僕が孤独に陥ったら何を頼りにするだろうか?






僕自身を頼りにするほど僕は頼りになるだろうか?








きっと、そばにある何かに頼ってしまうんだろうな・・・







僕はまだまだ、弱いな。



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