はたしてこの病院の薬は足りているのか？
疑問に思い、看護士さんに訊いてみた
この町には製薬会社もあるし薬草もあるから大丈夫らしい・・・
さすが、隠れ里。
もう、体力も戻ったことだし退院しようかと思い
助けてもらった女の人にお礼とお金を渡しに行く。
結構美味しいものを食べさせてもらったし・・・これ位の出費は・・・やっぱり痛いなぁ・・・
僕は女の人を探し回る。
名前も知らないし顔の印象を頼りに看護婦さんや看護士さんに尋ねてみる。
しかし、なかなか上手く伝わらないらしく首を傾げられて
「わからないなぁ〜」の返事ばっかりだ。
そういえば・・・・この病院の娘とかそんなような事を言っていたような・・・
病院が家なんて変わってるなぁ〜・・・・院長の娘かぁ
･･･ご令嬢だなぁ〜
・・・・・・玉の輿
何故だかそんな言葉が浮かんできたが、この際、気にしない。
僕は、目の前を歩く看護婦さんに訊いてみた。
あの、院長の娘さんて、これ位の身長で、こんな髪型で・・・
僕は身振り手振りで何とかあの女の人が院長の娘かどうか訊いてみると。
「ええ、そうですよ」
ビンゴ〜！
（確かにあの女の人はこの病院の娘で名はユカリと言うみたいだ。
「貴方で９人目ですよ」
え？ 何がです？
「ユカリさんに助けてもらったって言う人です」
（ほほう、ユカリさんは何とも優しい人なんだなぁ・・・
「ユカリさんは今でも困っている人がいたら助けてようとしているみたいですね」
（今でもって？
「本当に優しい人でした」
はい？
「お亡くなりになってるんです･･････ユカリさんは」
・・・と、なると・・・僕が見たのは・・・
「初めてですか？ 見るの」
・・・初めてです。 初体験です。
「はは、運が良かったですね」
僕は初めて見た････
天使というのを。
そう滅多に見られるもんじゃない。
行いと素質が良いとなれるらしいのだが･･････
僕は天使に導かれこの病院に来たのだった。
看護婦だったらそれこそ白衣の天使だなぁ･･･
頭には輪っかも
背中には翼も無かったけど
ユカリさんは天使なのだ。
この世の中にはそんな天使が溢れているのかも・・・
公園で見かけた、犬と遊んでいるお兄さん
ビルの屋上で弁当食べてたお姉さん
電車のシートにちょこんと座っていた女の子
駅前で雨の中、募金を募っていた男の子
天使は見たこと無かったと言ったけど、実は出会っていたのかも
天使はそっと、僕の心を、みんなの心をほっとさせていたのかもしれない
僕はお金を払い（高額では無かった）病院を出て、背伸びを一つ
さてと
これからどうしよう・・・
・・・住み込みのバイトでも探そうかな
僕はコンビニでバイト情報誌を立ち読むことにした。
ふむふむ
ふむふむ
ふむふ、ガッシャーン
突然ゴミ置き場に積まれたゴミが崩れ、辺りにゴミが散乱した。
何事だ？
・・・何か、嫌な胸騒ぎがする
僕は読みかけの雑誌を置き、すぐ外に出た。
ゴミ置き場の真ん中辺りからもぞもぞと何かが動いてるのが確認できた
ちょっとした人だかりがゴミ捨て場を囲むようにでき始めていた。
『やられ・・・た・・・ぜ』
どこか朦朧とした感じで声が聞えた。
・・・内藤君？
内藤君！
僕は駆け寄った。
なっ、どっ、どうっ！
上手く喋れない
内藤君が横たわっている。
落ち着け、落ち着け、と自分に何度も言うが
僕の心臓は耳鳴りがするほど静かに止まっていて
声を上手く吐き出す事が出来ない。
『やられた････』
だっ、誰っ、誰に！
『俺の･･････』
内藤君の！？
『・・・・ハートは』
し、心臓！？ 心臓がどうしたの？
『ラヴリ―エンジェルに・・・・・・』
羅武裏威艶慈恵流に！
『打ち抜かれた････ＺＥ！』
打ち抜かれた！ ど、どこを？
僕は内藤君の体をよく看たが特に出血も無かった
・・・ん？ 羅武・・・ラヴリーエンジェル・・・？
内藤君は幸せそうに笑い、『ＺＯＫＫＯＮ・・・ラヴ』と呟くと、がくりと気を失った。
・・・首しめてやろうか・・・
