変な旅?7

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変な日記集2






僕に出来ること

それは何か?


向こうで何をすればいいのか?


さっきから僕はずっと考えていた



町には人気が無く

とても静まり返っていた


心の拠り所にしていたラジオ番組

しかし、そこから流れ出したのは悪意

町の皆を破滅させる悪意


外に出られないという絶望の中に見つけた小さな光

その小さな光で笑顔になり、小さな光を信じ

進み、疑いが無いと信じた心は

いつの間にか光で眩んでいて

自分がどこを歩いているか分からなくなって

眩んでいる者もそうでない者も、助けを求め

また光を求める


そして、皆、眩んでしまった・・・



この計画性、実に吐き気がする



と、突然ユカリさんが声をかけた

「怖い顔してますよ?」


・・・そりゃそうで―

言葉を遮りユカリさんは言った


「私、ラジオの人を信じているんですよ

支えになっていた、あの温かい言葉を・・・」



でも、ユカリさん


「ラジオの人も被害者だと思うんですよ・・・」



え?



「悪意の」

僕らは町を歩く





張り紙が風に飛ばされ足元に張り付いた

それに手を伸ばそうとした時


ザザッ


町にノイズが走った


『同志諸君、楽しんでいるか?
そろそろこの町の暮らしにもうんざりしてるんじゃないか?』

町が微かにざわめく

『外からの連絡によると、もうすぐトンネルが開通するらしい』

そこら中から歓喜の声が聞える

よかった・・・みんな「悪意」とやらに操られているかと思ったがそうではないらしい
周りからは以前のように人びとの声が聞える

僕は安堵した

絶望的な状態を想像していたが、実際はそうでなかったみたいだ
人びとは外にあまり出ないだけで、ちゃんと生活しているし感情が無いわけではないようだ

「内藤君、思ったより平気―」
平気そうだよ?と言おうとしたが、内藤君、ユカリさんの顔を見たら言葉が出なかった



『従え』


一言・・・たった一言聞えた・・・


それだけで、町の声が一斉に失われた


酷く寒気がする・・・


『外に出ても、私の伝えた言葉を忘れず、きちんと実行して欲しい』



『以上、放送を終了する』





足が震えた


これが・・・「悪意」

電波塔が倒されている


「町の皆が倒したんです」
ユカリさんが言った。


僕はこの光景を昔見た気がした

デジャブ?


「今この町にはローカルな毒電波しか届かないんよ」



そういえば・・・ユカリさん?

「え?なんです」

放送局に行ったら何するんです?

「事の真相を確かめるんです」

確かめるって?

「『悪意』が在るかどうかです」






「もしかしたら私たち寄りの事かもしれないんで」
ユカリさんは僕にニッコリ笑ってみせた

私たち寄りって?

「世に言う悪魔さんの仕業かも・・・って事です」


・・・


『・・・』


「まぁ、まだ、推測なだけですから」
ユカリさんはニッコリ笑って見せた


が、僕と内藤君は顔を見合わせたまま
たぶん同じ事を考えていると思う



悪魔かよ!




「その時はその時で、私が何とかしますから」
ユカリさんは気合の入ったポーズをする


が、あまり心許ない・・・


ユカリさんの推測が外れる事を祈るしかない・・・


外れたら外れたで、僕たちだけで事を解決するのも心許ない・・・



ラジオが原因じゃなきゃいいなぁ・・・と正直思った

ラジオ放送局前・・・


守衛が2人いる
大きいのと小太りの普通のおっさん2人だ


「ユカリさん・・・」
僕はユカリさんにこれからの意見を仰いだ


『やっぱり・・・私が合図したら走って中に入って下さい』
ユカリさんはそう言うと僕と内藤君の背中にポンと叩いた


・・・ああ、いよいよ後には退けないな・・・と思った


「やはり来ましたか。この町の天使さん」


声の方へ顔を向けると入り口に立っていた守衛2人が僕らの目の前にいた


『ええ、もちろん。守衛さん、そこを通してもらえますか?』
ユカリさんは笑顔で守衛に言った


「それはできません」
大きい方の守衛はいかにも守衛のように返事した


『私はダメでも、この2人はいいのでは?』

大きい方は僕らをじろりと見た

「こちらは普通の方のようですね」

・・・寒気がする・・・

内藤君は僕の肩に乗り
「こいつら・・・何か怖いないか・・・?」
と、尋ねてくる

「天使である貴女を入れるな、とだけ仰せつかっているので・・・」
守衛はビルの最上階を見た



ホッ・・・


いや、安心する所じゃないだろう・・・
ユカリさんの言う通りなら、ここから先は悪魔さんが待ち受けているんだろ・・・
となると、ユカリさんが居なくなったらこちらの陣営は勝ち目が無いのでは・・・


「では、こちらの2人は中に入っても良いですよ」
守衛がニコリと笑いかけた

普通のおっさんの顔に見えたが
その時、肩にいる内藤君の爪に力が入ったのを感じた
不安な表情のまま守衛2人の横を通り過ぎようとした

その時

「入れたらな」

と、小太りの守衛が言った


え?


肩に居た内藤君がバサッと飛んだ


振り向こうとした時

『走って!』
ユカリさんが叫んだ


迫力に押され僕は走った
フワリと体が軽いのに驚いた


じんわりと背中が温かい


入り口間近、僕は振り返った


小太りな守衛の周りを飛び回る内藤君
そして、大きな守衛と対峙しているユカリさん


入り口の自動ドアが開く


「内藤君!ユカリさん!」
僕は叫んだ


『行って下さい、内藤さん!』

「でも!」
内藤君が心配そうな声で答える


『後から行きますから!』

「でも、ユカリさん!」

内藤君・・・君って奴は・・・


『足手まといです!』

・・・ユカリさんが叫んだ



・・・・・・



内藤君はバサッと高く舞い上がり
滑空しこちらに来た

同時に自動ドアを通り抜ける時


「ちくしょう・・・」

と、内藤君の呟きが聞えた

あまり広いとは言えない受付のある一階


僕らは辺りを見回した


ガ-----・・・


自動ドアの閉じる音しか聞えない・・・


「無人?」


僕と内藤君は顔を見合わせた


丁度隣の壁に貼り付けてある案内板を見て目指すべき階を探す


「さて、内藤君・・・」

「ん?」

内藤君が肩に留まる

「どこに向かう?放送室とか?」

「最上階の8階だな・・・」

「・・・なんで?」

「さっき、守衛の奴が最上階を見たんよ。たぶんそこに親玉がいる・・・と思うんよ」


僕は自分の鼓動がどんどん早くなっていくのを感じていた


「直行して早いとこ、終わらせるとしよう」

内藤君はエレベーターの前まで飛んでいった


僕の中で不安が大きくなってゆく

いきなり、親玉・・・?
悪魔って事だろ?
えっと・・・何をすればいいんだろう・・・えっと・・・えっと・・・

思考がとても鈍い・・・


ただ心臓だけがバクバクと音を立てる


「急ぐぞ、ボタンを押してくれ」

内藤君が急かす


「うん・・・ユカリさん早く来てくれないかなぁ・・・ねぇ、内藤君・・・?」


「・・・不安なのは分かるけど・・・情けないことは言わない方がいいと思う」


「・・・」

僕はとても責められた気分になった

何か、自分がとても無力で情けなくって・・・

内藤君より身体も大きいのに・・・中身が全然小さくって・・・

さっき決めたことなのに、まだ自分から動こうとしない・・・

とても情けない・・・



「・・・すまんな」

内藤君はそう言って僕の肩に留まった


「何か、急いでいた・・・
俺も不安なんよ・・・でも、それ以上に悔しいんよ」


内藤君が入ってきた自動ドアを振り返った

外はここからじゃよく見えない


「何か力になりたい・・・その思いが先走ってて・・・すまんな」


「いや・・・僕が情けなかった、ごめん内藤君・・・内藤君は強いね」


「ん?」


「さっきだって、守衛とやりあってたし・・・今だって・・・」


「ん〜・・・そりゃ、お前がいるからよ」

内藤君は少し笑った


僕の中で言葉が生まれた





『今度こそ』






「・・・・・・さ、内藤君、ボタン押すよ」





カチ





2人でエレベータの数字を見上げた・・・







・・・・・・






・・・しばらくして思った・・・








コレ動いていない。

階段を駆け上がる


体が軽いのでとても軽快に駆け上がってゆける


2階

3階

4階

5階



と、急に体が重くなる


「内藤君・・・なんか重くない?」

「うむ・・・元に戻ったようだな・・・」


ユカリさんの身に何か起きたか・・・
悪魔関係の力が働いたか・・・
ただ効果が切れたのか・・・

どちらにしろ、不安材料には変わらなかった

「ここからは少し慎重に・・・」
内藤君が階段の手すりの上に乗った

「ん?6階には放送室があるのか・・・」
階段の案内板を見た



「みたいだね・・・・・・・どうしたの?」
僕は7階への階段を登ろうとした

と、内藤君が
「な、放送室を見に行ってくれん?」

「どして?8階に居るっぽいんでしょ?」
僕は問い返した

「いや、DJが居るかもしれんから・・・」


「・・・内藤君はどうすんの?」


「8階に向かう」
と上を見上げた


「ちょっ・・・」
ちょっと待ってよ、と言おうとしたが止めた
内藤君が悪魔とタイマンで対峙する事への不安とか恐怖とか色々あったが


僕は彼を信頼した

彼がそうしてくれるように


「やばいと思ったら逃げるんだよ?内藤君」

「お互いにな」


内藤君と僕はニヤリと笑って走った



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