なかはらさんのリク「嫁姑戦争」
嫁姑戦争
「もう一度、お知らせします。嫁姑戦争は」
終わったのだ。
マサヨ(嫁)はニュース速報を聞きながら、ゴム手袋(ピンク)をはずし息を吐いた。
長かった・・・いや、そうでもなかったか?
マサヨ(嫁)は今までの戦いを思い出していた。
マイ(嫁)がエプロンをはずしながら言った。
「やっと、終わったわね」
「ええ、辛かったわ」
「亀の甲より年の功とはうまく言ったものね」
「ええ、まさかお皿の裏側で包丁を研ぐなんて考えもしなかったわ」
「あれにはびっくりしたわ」
ふたりは今までの戦いを思い出していた。
「そうそう被害妄想の激しい姑には困ったわ」
「あれは確かに強敵だったわね、語尾には『私の事が嫌いなんだ』や『殺そうとする』が必ず付くのよね」
「息子離れ出来ない姑にもまいったわ」
「ええ、『私の息子を盗った』って言われたときには固まったわ」
マイ(嫁)は雲を見上げて言った。
「ふぅ・・・あの白い割烹着がもう夢に出ることは無いのね?」
「ええ、そう願いたいわ」
「嫁姑戦争は終結を迎えました!」
タマヨ(姑)は苦々しい顔をしている。
アキヲ(姑)はタマヨ(姑)の顔を見て言った。
「タマちゃんどうしたんだい?」
「ふん、あの嫁等にはまだまだ教える事はたくさんあるんだよ!」
「まぁまぁ、興奮するとお迎えが近くなるから」
「朝起きれない、掃除が出来ない、料理が出来ない、すぐに友達と遊びに行く。これじゃ、太郎(息子)が可哀想だよ」
「うんうん、分かるよ」
「語尾に『出来ないんですよぉ』が必ず付く嫁、今度遭ったら徹底的に教え込んでやる」
「タマちゃん、もう終わったんだよ」
「出来ないじゃなく、やらないんだよ。どうしてやろうともせずに諦めちまうんだろうね」
「タマちゃ〜ん」
「今の世の中、個性うんぬん言ってるけどさぁ、ワガママを通して良いって事じゃないだろアキちゃん?」
「うん、私もそう思」
「確かに私等の考えが少し古いのは否定できないけど、常識の無い嫁等は許せんのよ」
「タマちゃ〜ん、戻ってきて〜」
「ゴム手袋や泡立て機使って米をとぐのを黙って見てろって言うのかい?」
「タマちゃ〜ん、もう終わったんだよ〜」
「詳しい情報によりますと、息子夫婦が引っ越す事になりまして、嫁姑戦争は終結した模様です。
あ、ただいま中継が入りました」
レポーターがあわただしく終戦を発表し、中継の映像に画面は変わった。
画面の中には、嫁代表ミサコがマイクの前に立っていた。
「途中ですが、姑代表の方にも動きがあった模様です」
姑代表キクがマイクの前に立っている。
「・・・・・あ、あ・・・・」
キク(姑)はマイクの入りを確かめている。
『二人の代表の中継を見た嫁や姑はその言葉をかみ締め、自分の行いを振り返った。
女の人は痛みを越えて子供を産む。
そのため、我が子への執着は強いと思われる。
だから、自分の子が自分以外の人間と暮らす事に少し嫉妬するのかもしれない。
男である僕の仮定である。』
3日後の新聞にこのような事が書かれていた。
こうして、嫁姑戦争は終わった。
皆、ミサコ(嫁)キク(姑)の言葉を各々の胸に刻み、些細なケンカはあっても平和に暮らし始めた。
これは子供が生まれるまでの短い冷戦状態とも言えた。
嫁姑戦争(同居問題)→嫁姑戦争(初孫誕生)
どうでしょう?
だめだめ?
お互いを思う気持ちがあれば、無駄なケンカはないんだけどね。
気持ちって全部は伝わらないし、思い違いもするだろうし・・・
どちらかが悪いってこともあるし・・・
なかなか気付けないんだよね。
相手の気持ちも、自分の過ちも。
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