結婚式が中止になって、もう大変にゃ〜 の巻



彼の名前はルイズベスト、ダメ神父である。
「ダメって言うな!」
……ダメ人間。
「大きなお世話だ!」
神の声が聞けるのに、神を信じない困った奴である。
「傍観するだけの無能な奴を信じる気にはならねぇよ」
……口も悪い。
「ちっ、うるさい幻聴だ」
私の言葉を無視しタバコに火をつけ、雨の降る外を観た。
この町はよく雨が降る。

ギッ
と教会の扉が開いた。
「神父様!来週の結婚式中止になりました!」
レインコートを着た50歳半ばの小太りの男が息を荒げ言った。
「ほほう。で、いつにやるんだ?」
外を観ながらルイは尋ねた。
「いえっ、結婚式自体が中止なのです」
「……は? 何があったんだ?」
ルイズベストは男の顔を見る。
男は言い難そうに黙っている。

























教会内に沈黙が訪れる。


「新婦が逃げたとか?」
「えっ!!」
ルイズベストが冗談混じりで言った言葉に男はひどく反応した。
「……マジでか?」
「……ええ、実は……」











再び教会内に沈黙が訪れた。


ふぅ……と煙を出しルイズベストはタバコを灰皿に押し付けた。
「で、新郎は?」
「えっ!!」
男はまたひどく反応した。
「……新郎もか?」
「……ええ、実は……」
そう言って、男は苦笑いを浮かべ、ハンカチで額を拭いている。
「中止は良いが、事情が気になるな」
「そ、それは……」
ハンカチで鼻の下を押さえ男は黙っている。
「まぁ、直接聞くから説明はいい」
ルイズベストは男の横を通り扉を開けた。
「あ、あの!? どこへ?」
「とりあえず、あんたの雇い主の所だな」
と、雨の中を歩いて行った。
「傘もささずに行くのですか?」
ルイズベストは独り言の様に
「雨は嫌いじゃないからな……」
そっとつぶやいた。
男は扉を閉め、駆け寄った。
「私のコートをお使い下さい」
いそいそと脱ぎ始めるが、ルイズベストは構わず歩き続けた。
「どうぞお使い下さい」
男はコートを差し出した。
「風邪引くぜ?」
「いえ、でも……」
ルイズベストは頭をぽりぽり掻き、ポケットから黒い折りたたみ傘を出した。
「心配するな」
ニッ、と笑う。
「なんだ、あるなら言って」
しかし、男の言葉を待たずに使わないでそのままポケットにしまった。
「……」


雨の中傘もささずに歩く男とその後ろにコートを抱えて歩く男。
奇妙な光景である。







巨大な屋敷の正門前、ずぶ濡れの男が二人。
「ここだよな?」
「はい、少々お待ちを」
男は守衛に門を開けさせ、主人を呼ぶように伝えた。
「こちらです」
門をくぐり、庭を抜け、屋敷のドアまで案内した。
「どうぞ」
男がドアを開けると、赤絨毯とメイド達が待っていた。
「ようこそルイズベスト様」
一斉に礼をすると一人のメイドがフワフワの白いタオルをルイズベストに手渡した。
「どうぞ」
「あ、サンキュ」
丁寧に礼をするとメイドは列に戻ろうとしたがルイズベストが呼び止めた。
「もう一つタオルを貸してくれないか?」
「はい、少々お待ち下さい」
そして奥からもう一枚タオルを持って来た。
「どうぞ」
「サンキュ」
メイドは再び丁寧に礼をして列に戻った。
「ほらっ」
ひょいとタオルを男に投げ渡した。
「あんたもずぶ濡れだろ?」
「いえ、私は……」
男は困った顔をしてタオルとコートを抱えている。
真ん中にある大きな階段の上から大きな声が響いた。
「ようこそ神父様!……な!なぜそんな濡れて……コラ!チャールズ!!お前は何を…?」
と、チャールズに目をやった。
「なんでお前も濡れているのだ?」
男…チャールズは困った顔をして、声の主は不思議そうな顔をしている。
声の主は高価なスーツを身にまとい、髪をかっちりオールバックに固めて、伯爵ひげを生やし、
いかにも貴族な格好である。
名はリッチー。貴族である。
「結婚式の事について説明してもらえるかな?」
その一言で場の空気が一気に凍り、リッチーの顔が曇った。
「チャールズに聞いてないのですかな?」
「直接聞こうと思って」
リッチーは少し考えた様子でひげを触っている。
「では、着替えを持って来させますのでそれから説明しましょう」
メイド達が動き出す、が
「いや、どうせまた濡れるんでこのままで結構。このあと新婦の所にも行くんでね」
リッチーは苦笑いを浮かべた。
「それは都合が良い、どうぞこちらに……」
2階の奥の部屋に案内された。

ドアを開けると
「こんにちは、ルイズベスト君」
「あ……」
そこには新婦の父親が座っていた。
父親は高価なスーツを身にまとい、髪をかっちりオールバックに固めて、伯爵ひげを生やし、
いかにも貴族な格好である。
名はトーリエ。貴族である。
こちらは眼鏡をかけてはいるがリッチーと同じような格好をしている。
「都合が良い」
ルイズベストはつぶやいた。
ばたん、とドアが閉まる。
広い大きな部屋に新郎と新婦の父親が居る。
「で、説明を……」
ルイズベストが尋ねると、二人は一枚の紙を出した。
「今朝こんなものが!」
二人は同時に紙を見せた。
『顔を見た事も無い相手と結婚するのは嫌だ。家を出ます』
といった内容だ。
「ふ〜ん。やっぱりそういう事か……くだらんな」
ルイズベストは冷たい視線で二人を見た。
政略結婚。まさにそれだった。
「くだらんとは何だ!」
「そうだ、この結婚には我等の野望がかかっているのだ!」
二人は血管を浮かし激怒した。
「これで、我等の計画が水の泡だ。一族の恥だ!」
「まったく、親をなんだと思っているのだ」
リッチーはひげを触りながら、トーリエは眼鏡を上げながら文句を言っている。
「あんた等にとって子供ってなんだよ? 野心を燃やすのはいいが子供をそれの道具にするんじゃねぇよ」
ルイズベストはうつむいて言った。
「小僧が何を言っているのだ」
「事の重大性を分かって無いようだね」
トーリエがクイッと眼鏡をあげた瞬間。



ガッ

ルイズベストは二人のむなぐらを掴んだ。
「きたねぇもんを見せるんじゃねぇ」
ルイズベストは押し殺した様に言った。
しかしトーリエも黙ってはいない。
「おい、貴様何をしているのか分かっているのか?」
トーリエが眼光鋭く睨む。
「あんた等も、何言ってるか分かってんのか?」
ルイズベストの顔が険しくなる。
「…恥だと?……恥はあんた等だよ……あんた等、子供の恥だよ!!」
むなぐらを掴む手に力が入る。
とその時ルイズベストの右頬にある古傷が紅くなりはじめた。
「ちっ!」
バッと手を離し部屋を出ようとする。
「おい、こんな事をしてただで済むと思うなよ」
トーリエがすごんでみせたが振り返りもせず部屋を出た。
「お帰りですか?」
部屋の外でチャールズが新しい服に着替えて立っていた。
「ああ、じゃあな!」
ルイズベストはすたすたと何も言わずに帰って行った。
「なっ! 何なのだあの神父は!? あれが神に仕える者のやる事か」
トーリエが息巻いているとリッチーが言った。
「彼の事は後で下の者にヤらせるとして、これからの問題について話し合わなければ…」
「……うむ、そうだな。……計画はまだ終わってはいない」






雨の中、傘もささずに歩いて行く男が一人。
右頬を冷ます様に雨に打たれている。

「面倒だな……」
後ろから、バシャバシャと走って来る音がする。
ルイズベストがゆっくりと振り向くと
「……あ、あんたは」
拍子抜けした。
走り寄って来たのは知っている顔だった。
「神父様……」
「ん? 何か用かチャールズ?」
傘もささずチャールズが神妙な顔をする。


雨音が二人を包む


チャールズは深く頭を下げる。
声が雨音に消されて聞こえない。
頭を上げ、帰ろうとするチャールズを呼び止めると、ルイズベストはひょいと黒い塊を投げた。
チャールズがそれを受け止めると、ルイズベストは、にやっと笑って言った。
「それじゃ雨は防げないぜ」
「……ふふっ」
チャールズは左手に隠すように持っているモノと渡された物を見比べて笑った。
「確かにコレは役に立ちそうにないですね」
「…じゃあな」
ルイズベストはまた歩き出した。
「では」
チャールズは傘をさして屋敷に帰って行った。
黒い傘をさして。







なぁ、良い事教えてやるよ。
「……ノーサンキューだ」
数日後、彼等は出会い、恋をする。






「…ふん、俺には関係の無い話だ」



終わり




あとがき

長々と駄目文章読んでいただきありがとうございます。

書いてる本人が初心者なので、全然上手い文章とか書けないんですが、これからも頑張っていこうかなと
思っております。
どうでしょう?感想等くれませんか?
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